きみとなら、雨に濡れたい




「ねえ、お母さん」

お菓子を食べ終わった頃、柴田が問いかけた。


「ん?なに?」

「水飴症候群って知ってる?」


思わず口に付けていた紅茶を溢しそうになってしまった。まさかここでその話題になるとは思わなかったし、美憂は町の伝説と言っていたけれど大人が知ってるわけ――。


「もちろん知ってるわよ」

律子さんは驚くこともせずに、あっさりと答えた。


「じゃあ、もしかして美憂にその話をしたのもお母さん?」

「うん。あの子、そういう話が大好きだったでしょ?だからこの町にも不思議な話があるんだよって、小さい頃に言ったら目を輝かせてた」


つまり、美憂は律子さんから聞いた話を俺たちに話していたってことか。おそらく柴田も自分なりに話の出所を考えた末に、律子さんかもしれないと思い、尋ねたのかもしれない。


「それって、妹が姉のために流した涙が雨って話だよね?なんか美憂が小暮に話してたことと違うみたいなんだけど」

すると、何故か律子さんの顔がゆるんだ。


「ああ、それね。実は美憂があまりにその話を気に入ってたから、何度も話してる内に私が色々と変えちゃって……」

「え?」

柴田と俺の声が綺麗にハモった。