きみとなら、雨に濡れたい



「話せた?」   

手をゆっくりと離したあと、柴田が聞いてきた。


「……一方的に、だけど」
 
「そうだよね。私も」


柴田はどんな話をしたのかな。瞳が潤んでいるから、俺と同じで美憂を恋しく思ってる気持ちをぶつけたのかもしれない。


「……美憂は、私たちのことをどう思ってるだろうね」


独り言のように小さかった柴田の声は、しっかりと俺に届いていた。


美憂はもういない。だから美憂の気持ちは、想像でしか語れない。

それを、もどかしく感じている間は、やっぱり背筋を伸ばすことなんてできないのかもしれない。


そんなことを考えていると、リビングのほうから物音がした。「和香?」と、襖から顔を出したのは律子さんだった。どうやら仕事から帰ってきたらしい。


「あら、小暮くん?」

「こんにちは。お久しぶりです」

一年ぶりに会う律子さんは変わってなかった。律子さんはそのあと紅茶を出してくれた。


「小暮くん、ずいぶんと顔つきが大人っぽくなったわね。前はまだあどけなさが残ってたのに」

「そう、ですか?」

自分じゃよく分からないけれど、俺も人並みに成長してるようだ。