きみとなら、雨に濡れたい



「ねえ、今日暇?」

学校が終わって放課後。帰る準備をしていた俺に柴田が聞いてきた。


「予定はいつもないけど」

「じゃあ、うちに来ない?」

「え、う、うち?」


全く予想してなかった言葉に、声が上擦る。まだ教室に残っていたクラスメートたちの注目を浴びてしまい、わざとらしく咳払いをして誤魔化した。


「お母さんのほうの家」

「律子さんの?」

つまりそれは美憂が暮らしていた家ということだ。俺の家には何度も来ていたけれど、俺は一度も美憂の家に行く機会がなかったから。


まさか柴田に誘われるとは思ってなかったけれど、俺を連れていきたい理由があるって顔をしていたから、もちろん断らなかった。


美憂の家は白い一軒家だった。小さな庭には雨に負けずに咲いている花がいくつもあって、その中には紫陽花もあった。 


「どうぞ」


柴田が鍵を使って玄関のドアを開けた。人の家に入ることが慣れていないので、脱いだ靴をどうやって置いておけばいいのかさえ分からない。


「そんなに畏(かしこ)まらなくていいから」

「……律子さんは?」

「そのうち帰ってくるよ」


柴田は慣れたように廊下を進むと、リビングに案内された。白で統一された家具などは清潔感があり、部屋はとても綺麗だった。