きみとなら、雨に濡れたい



「小暮くん」

美憂の病室を出てエレベーターを待っていると、誰かから声をかけられた。


振り向いて俺は頭を下げる。そこにいたのは美憂のお母さんである律子(りつこ)さんだった。

同じ階にある休憩スペースへと移動したあと、律子さんは俺に飲み物を買ってくれた。


「どうぞ」

「すいません。いただきます」


この二週間で、律子さんとは何度も会った。最初よりは慣れてきたけれど、今もふたりきりだと緊張してしまう。


「いつも美憂のことありがとね」

「い、いえ」


美憂の口から家族のことは色々と聞いていたけれど、律子さんは予想以上に背が高くてすらりとしていた。

美憂の放つほんわかとしたイメージとは違って、短い髪型がよく似合うカッコいい雰囲気の人だ。


「美憂はね、いつも私に小暮くんの話ばかりをするのよ」


どうやら美憂は俺のことを紹介してくれていたようで、初対面の時から律子さんは俺のことを『小暮くん』と呼んでくれていた。


「小暮くんと付き合うようになってから美憂は毎日楽しそうにしてたわ」

俺は「そうなんですか」と気恥ずかしさを隠すために頬を掻く。


病院での美憂の身の回りのことは全て律子さんがやっていた。とても手際よく、美憂が口に出さなくても美憂の必要なものを持ってくる。 

とても大切に育ててきたんだろうと、律子さんの接し方を見れば自然に感じとることができた。