きみとなら、雨に濡れたい



当てられた菅野はかなり苦い顔をしてるっていうのに、当てた本人はあっけらかんとした態度をしていた。


「私は悪くないですよ。何度もぶつかってきたくせに謝りもしないから、注意のつもりで投げただけです」


不覚にも俺はこの時はじめて柴田の声を聞いた。

短いショートヘアで、すらっとした体型の柴田はどちらかといえば男っぽい。なのに声は透き通っていて耳障りがいい声質をしていた。


「注意のつもりでもやり方があるだろう」

「他に方法が思い付きませんでした」


声だけなら可愛いのに、柴田の口調はまったく可愛げもなく反省もしていない。


「とりあえず菅野は保健室。柴田はコートの外に出てなさい」

先生はため息交じりに告げた。


菅野はどちらかといえばヤンチャな男子で、こんな田舎の高校で意気がっても仕方ないというのに、けっこう不良ぶっている生徒だ。

だから多分、鼻の痛さよりもこんな醜態をみんなの前で晒されて許せないって顔をしていた。


「覚えとけよ」

すれ違い様に柴田にそう言っていたけれど、やっぱり柴田は表情ひとつ変えなかった。

その気の強さに、俺はますます関わりたくないと思った。