幼稚園を卒園して、小学校に入学してもそれは変わらなかった。
普通の子と同じような生活をさせてあげたいという願いから、美憂の病気のことは先生しか知らなかった。
『和香。美憂のことちゃんと見ててあげてね』
この頃から私は、お母さんの代わりに美憂を気遣う係にいつの間にかなっていた。
『大丈夫?』『走っちゃダメだよ』『薬は?』
美憂になにかあったら、自分が叱られるのでいつも私は美憂の傍にいた。
美憂には私がついてあげなくちゃ。
そういう優しさは小学校低学年まではたしかにあったと思う。
でも、私がいなくても美憂にはたくさんの友達がいた。人懐っこくて可愛くて天使みたいな美憂と、みんなが友達になりたがっていた。
『美憂ちゃんがつけてるリボンが可愛い』
『美憂ちゃんが着てる洋服がほしい』
『美憂ちゃんがやらないなら私たちも中で遊ぶ』
美憂は学年やクラスが変わっても、いつも太陽のように真ん中にいた。
美憂に対しての嫉妬や劣等感を自覚したのは、この頃だったと思う。