その彼の言葉に、思わずため息を吐く。

なんと面倒くさそうな事になっているんだ。


……彼は、神隠しに巻き込まれたのだ。

恐らくは"鬼"か"天狗"の仕業。

そして……そんな事をやらかしそうな奴を、私は知っているのだ。


「……そうでしたか。さぞ驚きましたよね。

今から私の友だちの所に行きましょう。元の世界に戻れますよ」


私が少年にそう告げると、彼の表情はパアッと明るくなる。


「ほんとに!?お姉さんありがとう!!」



……素直で可愛らしい。

彼の笑顔につられて笑いつつ、手を取る。



「迷子になっては困りますから手を繋いで行きますね。

必ず私の近くに居てください。はぐれてしまったら助けてあげられませんから」


私の意味深な発言に少年は首を傾げる。

ほんとに彼は、妖怪の世界を知らないのだろう。

……いや、こんなに幼くて知っていたなら驚きなんだけど……。


「……?

助けるって、誰から……?」


「えっとですね……」


その時。

空から振ってきた何かが、ドン……!!と音を立てて降り立った。


「……!?」


驚いて目を見開く少年。

周りの妖怪は、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


……何とタイミングの悪い。

大きなため息を吐きつつ、懐から刀を取り出す。



「……下がっててくださいね。

彼奴は"狼男"。あの鋭い爪や牙で攻撃されたなら一たまりもありませんよ」



冷静に相手を見据える私に対し少年は、目を丸くしながらこう言った。



「……お姉さんは大丈夫なの!?」



「……えぇ大丈夫です。


私は、悪い妖怪を倒すのが仕事ですから」