《便利屋 波瑠様へ

先程の手紙を出しました者です。

焦っていたため、必要事項を何も書かずに手紙を送り申し訳ありません。

私の名は瀧。現世に住む"化け狸"です。

そして憑依されているのは……"鬼"の末裔の18歳の男、哲です。

哲はほぼ人間である妖怪です。

ですが妖力は強く、その為"大嶽丸"に目を付けられたのかと思います。

彼はまだ自分が憑依されていることを知りません。

出来るだけ危害を加えずに哲を救いたいのです。

どうかよろしくお願いいたします。

瀧》


……取って付けたかの様なタイミングで、手紙が来た。


"化け狸"の瀧……記憶の中にそんな妖怪はいない。


しかし、先程とは違い依頼人や憑依された者の名前がわかっている以上……対応の幅は広がる。

手紙を見つめていた薫に、私は告げる。



「……薫、依頼人が名乗った以上我々は依頼を受けなければなりません。

現世行きの準備をお願いします。薫には助手として来ていただくということで。

その間便利屋は閉めます。宜しいですね?」



薫は顔を上げ、小さく頷く。



「分かっています。まず現世行きの許可を取りに行ってきます」

「お願いします。ついでに杏子の所に行ってきてください。私たちが現世行きをするというのを伝えて下さいね」

「了解しました」


早速出掛けた薫を見届け、私は筆を手に取る。