《便利屋 波瑠様へ

"大嶽丸"関連の事件は、既にご存じかと思います。

今回はその件での依頼です。

貴方様には、現世に来て欲しいのです。

私の知り合いが、"大嶽丸"に憑依されてしまいました。

彼を救って欲しいのです。

依頼料は同封させていただきました。

現世である程度は不自由しない程度の量です。

住まい等はこちらで手配しましたのでそちらの住所も同封しました。

突然で申し訳ありませんがどうかよろしくお願いします》


送り主の名前もない手紙。

ある程度分厚い封筒からは、小さなメモ用紙とそれなりの量の現世……日本の通貨が入っていた。

断ることを許さないかの様だ。


……しかし。


「これは本当の依頼なのですか?

知り合いが憑依されていると言うのに、その人物の名すら書かないなんて……

一刻を争う事態ですよ、まさかその人探しすら私たちに任せようというのですか?」


私が口にした疑問に、薫は大きく頷く。


「この住所も怪しい所ですね……青葉さんに調べてもらいましょうか?」

「そうしましょうか。薫、連絡を頼みます」


再びその手紙に、目を移す。


依頼料まで同封すると言うことは、断られては困るという強い意志があるのだろう。


……ならなぜ、ほぼ断られることのない大規模な便利屋に頼まないのか。


うちはこの辺では重宝されていると思うが、少し離れたなら大きな便利屋はいくらでもあるというのに。