だんだんと、外が騒がしくなっていった。


それは時刻が夕方……妖怪が本格的に動き出す頃に近付いているからだけではないだろう。


常世にいる、"大嶽丸"に関わる事件を知った者全員が焦っているのだ。


"大嶽丸"が本気を出してしまえば……現世はおろか、常世だって危ない。


自らの心配をする者、現世に住む妖怪を心配する者……。


まるで常世が、大きな黒雲で呑み込まれるかのように。


その噂は広がり、同時に焦りや不安も広がっていく。



……便利屋の事務所の空気も、とても重い物になっていた。

薫にしても杏子にしても、現世に妖怪仲間がいる。

彼らの身を案じているんだ。

……そしてそれは、私も同じ。

現世にいる、一人の妖怪。


彼奴は大丈夫だろうか。

気ままな彼奴の事だ、"大嶽丸"の事を知らない可能性もある。

もし本当に知らなければ、彼は他のどの妖怪よりも危険に晒されるだろう。


……久しぶりに連絡を取ってみるべきか。



思い立ったら即行動。

私は便箋を取り出した。