話を聞いたあと、私たちはまた学校へと戻った。
優斗くんは生徒会室へ、私はまた屋上へ。
圭介がまだいるかはわからないけど、でもまた屋上へと向かった。
暑くなった屋上のドアを開ければ、いつもの位置に座るきれいな茶髪の男の子が一人。
「……なんでまだいるの」
「……そっちこそ、なんで戻ってきてんの」
ぐっしょりと汗をかいて、こんなところに長くいたら熱中症になっちゃうのに……
圭介はたったひとりでここにいた。
「あのね、圭介」
「……なに?」
「もとに戻るの、やっぱりやめる」
「…どういう意味?」
「私は前に進むことにする。
だから、圭介も前に進も。」
私がそういうと、圭介は私の顔を見て笑った。
本当に少しだけだけど、笑ったんだ。
「…なにそれ、意味わかんない」
そういう圭介はそういうけど、でもちょっとだけ嬉しそうで
「2番目だから、とかそんな理由で諦めるのやめる。
1番になれるように努力することにした。」
「……俺、ずっと前の彼女忘れられないかもよ。
それでもいいの?」
「うん、いいよ。そんなことよりも
私が圭介の事好きだってことの方が大事だから」
私がそういうと、圭介は少しだけ驚いた顔をしたけど、すぐにいつもの優しい笑顔にもどって私に手を差し出したから、私はその手に自分の手を添えた。
「っ、ひゃあ!」
だけどその瞬間、思いっきり手を引かれて、私は圭介の胸の中へと包まれた。
「……顔赤い。
大丈夫?熱中症とかなってない?」
「…大丈夫。顔赤いのは体調不良じゃないから。
圭介こそ大丈夫?ずっと外にいるし……確かに顔も少し赤いかも…」
「……俺も平気。飲み物飲んでるし
顔赤いのはたぶん真希と理由一緒だから」
そういう圭介の顔がなんだか少し可愛くて笑ってたら、圭介の顔がどんどんふてくされていった。
「……俺の彼女に戻る?」
「うん。ちゃんと覚悟してきた。
2番目でもいいやって」
「はは、なんだそれ。
……じゃあ、俺も覚悟決まるかな」
「なんの?」
「ん?真希を1番目にする覚悟」
「はは、なにそれ。それこそなんなの」
「じゃなきゃ失礼だからな」
そういうと私の後頭部に手を回して、私を圭介の肩に埋め込んだ。
「だから、もう木村と二人きりになんかなるなよ」
「……ふふ、ならないよ。
っていうか一緒にいこうよ。優斗くんが私を頼ってくるとき、本当に尋常じゃない量あるからね」
「……それ聞くだけで行く気なくなるな」
「いいじゃん、一緒なんだから」
「……それもそうだな」
……そういえば、この人の『彼女が他の男と二人きりになるのが嫌なトラウマ』って、さっき優斗くんが言ってたあれのせいなのかな……
「ん、そういえば今日流星群あるんだって!
夜一緒に見ない?」
「へぇ、流星群か。
じゃあ願い事し放題じゃん」
「私はなにお願いしよう」
「俺との事」
「えー、でも圭介は自分の事願うんじゃん」
「でも守れる男になるんだから、結局真希のためじゃん。」
「いや、まあそうかもしれないけど」
……でも、それは佐脇歩美さんを守れなかったから、なんだよね……


