「ちょ、ちょっ…
俺にも見せて!!」


いや、見るんかい。
結局見るなら最初から見ればいいのに


「噂は本当だったのか…」

「よし、わかったことだし帰るか」

「え!?い、いや!
動いてるとこ見ようよ!!」

「…普段、あんなさっぱりしてんのに、こういうときだけ熱入るのはなんで?」


なんて言ってる間にも、この人は私の腕がっつり掴んで通用口へと進んでいく。

もう、なんなんだよ。
こんな時間まで女の子連れ回していいのか、まったく。


「あ、空いてる」


そういってドア開けてしっかり中へ入る。
これ、立派な不法侵入じゃないのか?
バレたらどうするんだ。しかも受験生が。


「もう、どこ行くのー」

「さっきんとこ」


もう見たじゃんか。っていうかお腹すいたな。早めのお昼とお菓子だったからお腹すく…

……でもお菓子食べすぎたし太りそうだな


「やっぱない」


私の心中とは裏腹に、この人は動く銅像にめちゃくちゃ真剣だ。
お腹すいたよ。


「さっき見たじゃん」

「どこ行ったんだろなー」

「近く歩いてたりして」

「、っ!怖いこと言うなよ!」


……いや、どんだけ怖いの。
もっと小さい声で話してよ。見つかるじゃん。



━━━コツン、コツン……


「え、足音する」

「え、ちょ待った待った」

「だって足音するって」


思ったほどこわくない。
なんでだろ。夜の学校なんて怖さ満点なのに、私は今怖くない。

普通に、足音する方に歩き出してるよ。


「お、置いてくなって」


それに比べて怖がってばっかな圭介は私の腕にしがみついて、私の斜め後ろをビビりながらついてくる。

まったく、なんなんだ。
女の私を盾にするんじゃない。


「━━━あ。」

「え、お前らなにしてんの?」


足音する方にまっすぐ歩いてたら、普通にそこには優斗くんがいた。


「は?え、なにしてんの?」

「いや、こっちのセリフ。」

「なんかこの人、動く銅像を見たがってて」


私がそう言うと、優斗くんは心底呆れた顔をして

「はぁ?」

心底呆れた声を出した。