「真希~、腹減った」


……この男は…
なんでこうもタイミング悪いかね。

私は今から寝る予定だったんだよ


「なんか食べれば」

「なんもねぇから言ってんじゃん」

「……ったく、仕方ないな」

「さすが」


この男、将希(まさき)。
我が家を荒らしまくってる弟も、一応私には普通に接してくるから一応かわいい弟。

一応、ね。


「あんたさっき帰ってきたの?」

「ってか腹減ったから帰ってきた」

「いい加減大人しくなりなよ」

「真希もいい加減彼氏くらい作れよ」

「余計なお世話!」


なんなんだ、まったく。失礼なっ。
そりゃ彼氏の一人もいないけどさ。……それどころか、友達すらいないけどさっ


「ってかもしかして、将希は彼女とかいんの?」

「いや、俺ももう中3だから。
そんくらいいたって不思議じゃねーだろ」


うーわ、まじか。まじかよ……
弟に負けるとか…めっちゃ情けないわ…


「あ、でも
俺のツレが前真希が男と歩いてるとこ見たって言ってたんだけど」

「あー、学校の先輩。彼氏ではないわ」

「そいつと付き合っちゃえば?」

「は?いや、そういうんじゃないから」

「そういうんってどういうのだよ。
別にいいじゃん。もっと軽く考えろよ」

「別に今は今で楽しいし。
彼氏がほしくて仲良くしてるわけでもないし」

「だから手始めに」

「はいはい、でも私はあんたみたいに軽くないから」

「俺も別に軽い訳じゃねぇよ」


ま、弟の恋愛状況なんて興味もないけどさ。
将希が誰と付き合おうが、何人と付き合おうが。


「はい、ハムエッグくらいしかできなかったけど」

「…どんだけこの家材料ないんだよ」