「私、お礼言われるようなことしたかな…?」


私がそういうと、おばあちゃんは泪を浮かべながらこちらまで来て、私の手をとった。


「圭介を、助けてくれてありがとう。」


そう、強く強くそう言った。


「え……?で、でも私は圭介が刺されたあと倒れちゃって、私はなにも…」

「…ううん。圭介と、真希ちゃんの弟さんから聞いたけど
圭介、死のうとしてたんだって?そんな圭介に、真希ちゃんがいろいろいってくれたんだって?」

「あぁ…」


…でも、あれが圭介に響いていたかは微妙だよ。
結局アユさんの名前を借りて説得した。私のおかげじゃない。全部、アユさんのためだったんだよ。


「本当に、ありがとうねぇ」

「俺たちにはもう、圭介しかいなかったから」


そういって、おじいちゃんとおばあちゃんは私なんかに泪を浮かべながらお礼を言ってくれた。


「……本当に、私はなにも…」


なんにも、しなかったよ…
ただ、アユさんのことを思い出してほしかった。
大切だからこそ、そんなことしちゃダメだって思ったから……


「でも、あの場に真希ちゃんが来てくれてよかったって
圭介が言ってたよ」

「え?」


けいすけ、が…?本当に…?


「真希ちゃんが来てくれなかったら、最低な人間になるところだったって、真希ちゃんが来てくれてよかったって、圭介が言ってたんだよ」

「……そう、なんだ…」


私でよかった、か……
じゃあ、私の声でもちゃんと届いてたんだね…


「本当は、今日も圭介と一緒に来ようと思ったんだけど
……圭介と、別れちゃったんだってね…?」

「あぁ…、うん」

「それでもお礼くらい行きなさいって言ったんだけど
圭介が、俺なんかには会いたくないだろうからって…ごめんね」

「あ、ううん
それは本当にいいの。……私がしたかっただけだから…」


私が後悔したくなかった。ただ、それだけだから……


「……あの、圭介はこれからどうするの…?」


怪我して、退学届けだして……
圭介はこれからいったいどうなっていくの…?


「……圭介は、これから警察病院に移るの。
そんなに長くは入院しないんだけど…あの子がやったことは、決して許されることじゃないから…
今後のことは、警察の人と相談して決めていくよ」

「…そっか」


そう、だよね…
だって圭介は、本当に本気であの人を殺そうとしてた。
許されることじゃないよね…


「…じゃあ、おばあちゃんたちも大変だね…」

「でも、頑張っていくよ。
圭介も反省して、これから頑張ってくみたいだし、やっぱりあの子が元気で育ってくれるのが私たちの唯一の楽しみだからね」

「……そっか。
私にはもうなにもできないけど、遠くから応援してるね」

「ありがとう」