頑張って階段を上ると一気に暑くなる。
カーディガンを圭介に持たせておきながら、私も圭介の腕にしがみつきながら、この階段を上りきった。
家に戻ってからは朝御飯を食べて、みんなで畑のお手入れをして
お昼ご飯は私とおばあちゃんが作った。
「圭介は子供の頃からこれが好きで」
そんな、圭介大好きなメニューをね。
しっかりケータイに材料やレシピをメモして、私も手伝った。
ここに来なくても、私でも作れるように。
おばあちゃんの味が、私にも再現できるように。
「これ食うとここ帰ってきたって感じするわぁ」
そんなことをいいながら食べる圭介見てると、本当に好きなんだなぁって実感する。
…なにか、私の作ったご飯でもそのくらい思ってくれるものができたらいいな。
私の作るご飯は好きなのかな…
「…真希?食べないの?」
「え、あ…忘れてた」
「え。忘れてたとかやば」
「う、うるさいよ!今から食べるの!」
ただ考え事してただけだし!
私のご飯でも、それだけ美味しそうに食べてほしいしし!
「それ、真希ちゃんが取ってくれたトマトだよ」
「あ、昨日の?
…なんか、本当すごいよね
これおばあちゃんたちが作ったんだもんねぇ…」
本当すごいよなぁ…
何回見てもすごいなぁって。こうやって自分で作ったことないから…尊敬する。本当に。
「なんか、こんな暮らし憧れるなぁ…」
本当の大変さとか、私にはまだわからない。
でも、余分なものがないここが、私にはとても魅力的だ。
私のところも田舎だけど、それでも欲しいものがすぐに手にはいる。
お店もたくさんあるし、電車もバスもタクシーもある。
でも、そんなものがなくても暮らしていけるここが、本当に私はいいなと思った。
その分、大変のことが多いのも確かなんだけど…
「こんなに若い子がこんな田舎を気に入ってくれて嬉しいよ」
それに…昨日北山さんが言ってた。
あんだけ本音ぶつけても、そんなことでは仲が壊れたりしないって
人が少ないからこその、その絆。
その程度では壊れないって…そういうのいいなって素直に思った。
私には、そういう友達はいない。
すぐに壊れてしまう仲しかなかった。……それしか、知らなかった。
だから、本当に羨ましくなった。
それだけ深い絆で結ばれてる圭介たちが、羨ましくなったんだ…


