「…俺もさ、妹が死んで、親が死んで、彼女が死んで
じゃあ次は俺の番かって思うときがあって。

あの頃はすっげー本気で自殺を考えてたね」

「え、じゃあなんで屋上で自殺する人止めてんの」

「いや、あれは違って」


圭介はそういうと、やっと水から出て、私の横へと座った。
もう、水に浸かってたこの足は白くふやけていた。


「本当はさ、俺が死ぬつもりで行ったんだよ。
……でも無理で
だから誰か死ぬ人がいたら、俺も一緒につれていってもらおうと思って、あそこに通ってたんだよ」

「え!え、じゃあなんで私を止めたりしたのさ」

「え、死ぬ気なかったんでしょ?」

「……まぁ、死ぬ気はなかったけどさ」

「でしょ?…俺、死ぬ前日に妹に会ってたから
本気で死ぬやつの顔見たことあるから…なんとなく、この子まだ生きたいんだなってわかってた」


……そっか
私、あのときまだいきたかったのか

もう、生きるのも疲れたし、でも死ぬのもしんどいし
どうすればいいかわからなかった時期だったから…


「だから、俺も真希見てもう少し頑張るかなってそう思ったわけよ
…俺も、きっと本気で死のうなんて考えてなかったと思うし」

「じゃあ、あの日私が行ってよかったね」

「じゃなきゃ俺はもう死んでる」


そんなことを笑って話せる私たちはどれだけ幸せ者なんだろう
……前なら絶対できなかったこの会話。

幸せになりたいなんて願っていながら
私たちはもうそれなりに幸せなのかもしれない

命あるだけ…


「帰るか。飯もできる頃だろうし」

「そうだね。
…あの階段上るのやだなぁ…」

「だから頑張って生きろって」

「あれ上らなくても生きてます」

「上らないとここで死ぬだけ」

「はぁ…」

「なら来なきゃよかったのに…」

「それ言われたらなにも言えない」