翌日、起きたら隣に圭介はいなかった。


「おはよー…」

「あ、真希ちゃんおはよう!」


先に起きて顔でも洗ってるのかも?と居間に向かってみると、おばあちゃんが台所でご飯を作り、おじいちゃんが新聞を読んでいた。

…けど、圭介はやっぱりいなくて


「圭介は?」

「圭介なら滝にいったよ」

「・・・滝?」

「真希ちゃんも行く?
あっちの山の方にまっすぐ行くと浄水滝っていう看板が見えてくるから」


……滝って。
ここ、本当に山だな…

滝なんて、小学校の時の野外活動でしか見たことないや…


「……ちょっと行ってみよっかな」


ま、滝なんてなかなか見る機会ないし…まだ朝も早いから行ってみようかな


「あ、朝は寒いから上着あったら着てきな!」

「え、そんな寒いの?」

「滝のところは昼間でも涼しいから、この時間は寒いよ!」


私はこの真夏に上着というものは持っていないので、結局おばあちゃんのカーディガンを借りた。
なかなか暖かいやつだから、行きは着ていかないけど。


「行ってきまーす」


私はまた一人で、この道を歩く。
なんていうか、全然知らない土地なのに慣れた。

なんとなく、迷ってもなんとかなる気がする。
それに、迷うほど道の候補がない。
こっちを言われたらこの道しかないから。


「あ。浄水滝…こっちか」


家を出て数分で看板発見。
なんて楽なんだ。

……って思ったのも束の間
曲がってちょっと歩くと階段がひとつ。
もうすでにここでもかなり涼しい。


……でも、下が見えない。
これ、降りるのはいいけど上るのは大変そうだな…
学校の屋上よりきついかな…

帰りのことを考えると足が怯むけど…それでもここを降りたら圭介がいる。
そう考えたら、自然と足が階段へと向かったいった。


長い長いこの階段
下るだけなのに、だんだん足が疲れてくる。

まだ起きたばかりで体が固い状態で降りるのはきついなと思った頃、ようやく下までたどり着いた。


ここは本当に涼しくて
マイナスイオンというのだろうか。
なんか…すごい実感できる。マイナスイオンが飛んでくる。

……と、同時に本当に寒い。
カーディガン、素直に借りてきてよかった。



そして高いところからすごい勢いでドカドカと落ちる水、そしてそれをじっと見上げる男の子が一人

水が落ちてたまった小さな泉のようなところに足をつけて立っていた。

ドカドカと落ちる水に対して、この泉は異様なくらい神秘的だった。


すごい音で水が落ちているのに、静かなこの空間
私が近づいても全く気づかない。
それなのに、空気が張り詰めたような静けさ

時間を忘れたようにただただ立っているこの人に、


「……死ぬの?」


あの頃と同じように、話しかけてみた。