その文面は、正直想像してたアユさんとはかけ離れていて……

「ちょっと待って……」

理解に、苦しんだ。


「それが、お姉ちゃんの本音。
お姉ちゃんはレイプされたから死んだとか、映像流されたから死んだとか、まぁ間違ってはいないけど

本心はそこじゃなかったの」


その文面には

『それを楽しんでしまっている自分がいた』

そう、かかれていた。


『圭くんが好きなのに、他の人との行為を楽しんでいる自分がいた。
それを圭くんに知られるのが一番嫌なんだ

最低だよね。圭くんのことが好きなのに、圭くんを裏切って自分からその場所へ行っちゃうなんてさ。
……そんなことをみんなに知られるくらいなら、このまま消えた方がましなんだよね』


それで、メールが終わっていた。


「ちょ、待って……
え?でも結局は圭介のことがすきだったんでしょ…?」

「……うん、そうだと思う。
でも、私そのメールを読んですぐお姉ちゃんに電話したの。
あのメールどういう意味?って。消えた方がましってなに?って。

そしたらね、お姉ちゃんが言ったの
『圭くんにずっと好きでいてもらいたいから』って。
正直、私も最初理解に苦しんだんだけど、お姉ちゃんから圭介くんのことは好きだけど、他人との行為を楽しんでる自分がいて、死ぬ前は圭介くんよりもその他の人を優先させるくらいだったみたいで…

それなのに、圭介くんにずっと好きでいてもらいたいとかどんだけ贅沢なのって思って、私『ほしいものがなんでも手に入ると思ったら大間違いだよ』って言っちゃって。
『誰のことも犠牲にしないでなんでも手に入るなんて絶対にあり得ない。それを知ったら圭介くんがどんだけ傷つくと思ってんの』って。」


……うん、私でもそう思うよ。
だって、写真とか普段の圭介から伝わってくるアユさんへの思いは尋常じゃない。

本当にアユさんのことが好きなんだなって、当時を知らない私ですらわかってしまうくらいに。


「『お姉ちゃんがそんなんなら、私が圭介くんに言う』そう、言ったの。私がそういった。
そしたらお姉ちゃん、なにも言わなくて…なにも聞けず、突然大きな音ともに電話が切れたの。」

「……え…?」

「…警察の人に言われた。
最後の通話記録は私だって。死ぬ直前に電話してたのは私だって。
…私が、お姉ちゃんを殺したの。私がお姉ちゃんを追い詰めたの。

…それなのに、圭介くんはいまだに一番苦しんでる。
自分の気持ちに苦しんでたお姉ちゃんを最後まで追い詰めたのは私なのに、圭介くんはまだ自分のせいだって苦しんでる。

本当は全然そんなことないのに……

だから、お願い。
真希ちゃんが、圭介くんを支えてあげて?
もう、あんなお姉ちゃんのために苦しんでほしくないの。
……私も、やっと前に進み出したところだから」


そう、辛そうに私に懇願するゆずちゃんが本当に苦しくて

『好きと言われた分、私も圭くんのことを好きでいられたら…
好きと言った分、好きでいられたならよかったのに』


メールにそう書いたアユさんの気持ちも本当に辛そうで…


恋というものがこんにも大きなものだと、私は初めて知った。
こんなにも人を苦しめて、人の人生を変えるものだと知らなかった。

そんな私にできることなんか、少しでもあるだろうか……