気だるい朝、頭を揺らしながら席に着く。
箸を取って、目を覚ますためにトマトを掴む。


それを口の中に入れ、力が入らない顎でもなんとか噛めたら、中で弾けてぶよぶよしたゼリー状の部分が出てくる。大体飲み込んだ後もプチプチしたゴマのようなものとシャキシャキの皮が口の中に残る。


でもトマトの酸味のおかげで目が少し覚めた。
頭も意識も安定してきている。次はお母さんが上手くなったと喜んでいた卵焼きを食べた。初期は焦げていたけど、今はふかふかで美味しい。餃子の羽を薄くしたみたいなものがついているときもあるけど、特に害はないので気にせず食べればいい。


口から卵焼きがなくなってから白いお茶碗に目を移すと、うんざりした。
でも残す訳にはいかないから一口分掴む。張り付いて水分を奪っているみたいだ。ぐだくだと噛んでいると甘くなってくるけど、その甘さが重くて飲み込めない。


朝のご飯って、重いな。
食べ終える頃には私の気持ちは沈んでいた。


顔を洗い、歯を磨いてから自分の部屋に行って着替える。
着替えるのも憂鬱で、ベッドの上に座りながら、もう何もしたくないと思った。


今日はマラソン大会で、学校に行ったら更衣室で体操服に着替える。
なんでわざわざ制服に着替えるのか、と聞かれると……多分、どの学校の生徒かわかるようにするため。


体操服より制服の方が覚えられているし、すぐにどこの高校かわかる。登下校で問題行動を起こした時、学校に連絡が行くようにしたいのだろう。


登下校で何も起こさないんだけどな、と思いながらも着替え、仕上げにボタンを一番上までしめる。それが私だ。


それなりの重さを感じるリュックサックを背負い、玄関に向かう。前日に持って帰った教科書を出すのを忘れていた。けど今から出したら、準備してなかったの?しっかりしなよとか言われるし、なかったことにして行く。


「いってきます」


「いってらっしゃい」


目が完全に覚め、履き慣れた運動靴を履いてしまえば、足だけは軽くなってすたすたと駅に向かってしまうんだ。