私の本音は、あなたの為に。

(やっぱり、私は女子っぽくないのかな…)


そしてまた、いつもの暗い感情が私の中で首をもたげる。


(私は、男だから…)


男になりすます時間が、長過ぎたのだろうか。


懸命に、女子として生きようとしているけれど。


男子の様な口調に、なってしまっただろうか。


もしも、私の言葉の中に。


会話の中に。


表情の中に。


そして、身振りの中に。


男子として納得出来るような事が含まれていたのなら。


私はもう、手遅れなのかもしれない。


女子に戻るという儚い夢は、永遠に絶たれるのかもしれない。


家族の前だけで演じてきた、“男”。


他の場所でも首をもたげるようならば、それは。


私が、私では無くなることを表している。



「……そんな事、無いよ」


私が、涙を堪える為に下唇を噛み締めた時だった。


五十嵐が、ゆっくりと口を開いた。


「ありがとう、安藤。…今度から、教えてもらうかも」


「あっ、…うん!」


(良かった)


その返事を聞いた途端に、私の胸には安堵の波が押し寄せる。


(さっきまでの考えは、間違っていたんだ)


(私は女。…家では男でいい。ここでは女として生きたい)


五十嵐は、自分の言葉が私をこれ程までに安心させているだなんて、思いもよらないだろう。


1人でくすくすと笑っている私を見て、五十嵐は首を傾げながらも私につられて笑った。