私の本音は、あなたの為に。

「五十嵐、今日の視力検査、両目ともAだったんでしょ?」


私はそっと尋ねる。


そこまで驚く様な質問ではないはずなのに、五十嵐は、


「えっ!…嘘、安藤知ってるの、俺の視力?」


と、あからさまに動揺していて。


「そんなに驚かなくても…」


私は苦笑しながら言葉を紡ぐ。


「でも、五十嵐は目が悪いみたいだね」


「っ…」


ほんの一瞬、五十嵐が顔を顰めた。


まるで、触れられたくない傷跡を触られてしまったかのように。


(五十嵐…?)


けれど、それもつかの間。


私が瞬きをした時には、五十嵐は元の表情に戻っていた。


「うん……」


五十嵐は、微かに頷く。


それは、まだその現実を認めたくないかのようで。


「だからさ、読めない字があったら言って。…少しなら、教えてあげられるかも」


私はゆっくりと提案する。


その途端、五十嵐が目を見開いてこちらを見つめてきた。


「え……?」


「あ、迷惑ならごめんね。…読めるんなら大丈夫だけど、五十嵐、何となく読むのが大変そうな気がして…」


私は弁解するけれど、その言い訳の言葉も最終的には消えてなくなってしまう。