最終的に精神外科へママを連れて行き、ママが大きな精神的なショックで“優希”だけの全ての記憶を忘れ、本来なら“優希”で構成されるはずの所が全て“勇也”へ入れ替わってしまったという原因を突き止めた。


そして、その症状が出た原因が、私が髪を切った時だという事も。


それから、私とママは病院に毎日の様に通い詰め、ママの記憶を取り戻すリハビリが始まった。



何度も泣き、何度も怒り、けれどその怒りをどこにもぶつけられなくて。




そして、リハビリを始めて約1ヶ月後。


ママが私の事を、


「優希……。ありがとう、優希」


と、呼んでくれたあの日の喜びは、充実感は、今までの苦労は、一生忘れないだろう。




そして、もちろん私と五十嵐は30秒ハグを実行した。


初めは、“失敗したら”限定だったけれど。





きっと、これからも幾度となく私は窮地に立たされるのだろう。



自分の色が無いから、沢山の人に影響を受けてしまうかもしれない。



けれど、もう私は“私”を見失わない。



きっと、天国で兄も褒めてくれている事だろう。



『頑張ったね、優希。俺になってくれて、ありがとう』


と言いながら。



そう。


私は優希で、私には仲間が居る。


大切な親友が、彼氏が。



私はもう、1人ではないのだから。