その時。


『安藤ー』


私が沈黙してしまったのに気付いたのか、五十嵐の声が電話越しに聞こえてきた。


「……」


『安藤、別に大丈夫だよ。これで失敗しても、また次があるわけだし』


今、五十嵐が優しく笑っている気がする。


『それに、もし失敗しても30秒ハグがあるし。…安心して、言っておいで』


最初はともかく、最後の言葉は、もう愛する我が子に言う親のような台詞にしか聞こえなくて。


「…うん、そうだよね。…ありがとう」


こんなにも優柔不断な私を、信じてくれて。


『怜音。その台詞、成功したいのか失敗したいのか分かんない。…優希なら大丈夫だよ』


いつもいつも、“大丈夫”と励ましてくれて。


『まあ俺は、男でも女でも、どんな安藤でも良いんだけどね』


性別に関係無く、ありのままの“私”を見てくれて。


『失敗したら、五十嵐なんかじゃなくて私とハグしよう?ねっ?』


いつだって、私の事を考えてくれて。


「うんっ……!ありがとう、2人共!」



この2人が居れば、きっと私は大丈夫。



そう、信じたい。