自分でも驚く程スムーズに、日程が決まってしまった。


メールの中でも、いつも通り五十嵐は文字の打ち間違いをしていて。


あの打ち間違いを見たおかげで笑みが零れて、少し不安が解消された事は五十嵐には口が裂けても言えない。



「日曜日、か…」


なおも続いているトークグループから目を上げ、私はふっとカレンダーに目を向けた。


今日は、水曜日。


来週の水曜日には、もう終業式だ。


来週には係の仕事は無くなるから、私と五十嵐の図書委員の仕事は実質1回になる。


今週の日曜日にカミングアウトだから、私達3人が顔を合わせるのは後2日。


(……色々、頑張ろう)


リビングからは、ママがテレビを観ながら笑う声が聞こえる。


あの声が“優希”と呼んでくれるのか、今まで通り“勇也”と呼ぶのか。


どちらに転ぶかは、日曜日の私の行動次第。


(……色々、頑張ろう。うん)


もう一度、私は心の中で呟くと。


「母さん、何観てるの?俺も観るー」


と、瞬時に兄になりきって自分の部屋のドアを開けた。