私の本音は、あなたの為に。

「……大丈夫?」


さすがに可哀想になり、中腰になって彼の背中を撫でながら聞くと。


「…大丈夫に見える?」


目を最大限まで細くした五十嵐が、顔を上げてこちらを見た。


「俺の中での図書室を例えるなら、四方八方に大量のゴキブリが居て、そんな中で安藤達と話してる気分だったんだよ」


「ああ……でも、最終的に留まったのは五十嵐が……」


ほんの少しだけ反論しようと言いかけると、


「…でも、怖かったったら怖かったんだって」


と、五十嵐は立ち上がって私を軽く抱き締めた。


「えっ!?」


急な展開に戸惑う私。


「30秒」


けれど、五十嵐の言葉で私は簡単に彼の言いたい事を理解し、そっと彼の背中に手を回した。


「30秒経ったら、帰れそう?」


五十嵐を抱き締めながら、そう私が聞くと。


「うん」


すぐ隣から、彼の安心しきった様な声が聞こえた。


その言葉を聞いて、思わず私の顔にも笑みが浮かぶ。


「……安藤、ありがとね。言うんでしょ、お母さんに」


「…うん」


私の上がっていた頬は、すぐに元の位置に戻ってしまった。


「言い出したの俺なのにさ…本当に、電話だけでいいの?」


私は、少し考えてから答えた。


「いつ言うかは、3人で決めたいな。…電話だけでいいかは分からないけど、電話はしたい。させて」


「はいよ」