｢私達、あなたの言動には呆れてるの｣


私の言葉を後押しする様に、花恋も付け加える。


｢……何なんだよお前らっ…｣


数秒後、佐々木は目を伏せたまま図書室を飛び出してしまった。


私の横をすり抜ける時、


｢お前、男なの…？｣


と、疑問を口にしながら。


｢佐々木君、今何か言った？ねえ、逃げないでよ！まだ話す事は山の様に.........｣


佐々木が私に言った台詞が聞こえたのか、花恋は先程とは全く違う意味で目の色を変えて、佐々木を追い掛けて行った。


｢急に割り込んで、ごめんね！私、ちょっと優希の件に関して佐々木に言いたい事がっ！｣


そう、私達に向かって謝りながら。




私達の中で1番テンションが高かった花恋と、1番の元凶である佐々木が居なくなった事で、図書室は本来の静けさを取り戻していた。


(何か、新鮮……)


佐々木が居なくなり、“優希”に戻った私はほっと息をつきながら図書室をぐるりと眺めた。


この静けさが当たり前なのに、軽く違和感を覚えてしまう。


その時。


｢……あの、安藤。ありがとう｣


窓際に居た五十嵐が、ゆっくりとこちらに近付いてきた。


｢あっ！｣


今の今まで、五十嵐に発言させる隙も与えずに私達だけが勝手に佐々木と言い争いをしていた為、私は顔の前で両手をひらひらと振った。