「何って……安藤、お前だって疑問に思うだろ!?こいつ、字が読めないんだぜ」


「…そんな事、ないと思うけどな」


私はつかつかと佐々木の所まで歩み寄り、目の前で止まった。


「佐々木が知らないだけで、五十嵐は読めてんだよ?…お前だよ、何にも知らないの」


「はあっ!?…こいつ、黙って聞いてれば…」


「黙って聞いてれば、何いけしゃあしゃあと根拠もない事言ってんの!?」


佐々木が、私に反論しようとしたその時。


突然図書室のドアが勢い良く開き、仁王立ちをした花恋がそう言いながら現れた。


「えっ?」


花恋の突然の登場に、やはり五十嵐は口をぱくぱくさせていて。


五十嵐と同じく、私も驚いた。


(花恋…)


数年前は、花恋は私の味方になってくれた。


そしてそれは、きっと、今回も。



私と素早くアイコンタクトを交わした彼女はうっすらと笑顔を浮かべ、怒りのこもった目つきで佐々木を睨んだ。


今日は、頭の上の方で長い髪をお団子にして束ねている花恋。


だからなのか、花恋が髪を下ろしている時よりも、彼女から怒りのオーラがまざまざと感じられた。


「毎回毎回、何なの?佐々木は何がしたいの!?いつも、人の邪魔ばっかりして…。自分で自覚してよ!」


数年前と同じ花恋の勢いに、私もつられる。