彼は必ず、私が図書室に行って少ししてから図書室に来ていたのに。


(五十嵐、成長してるじゃん)


変に感激しながら、私は図書室のドアに手を添えた。



その時だった。


「お前さあ、何でいっつも字読めないんだよ?」


中から、誰かの声が聞こえてきたのは。


(ん?)


ドアを今まさに開けようとしていた私は既の所で踏み留まり、じっとその声に耳を傾けた。


「俺、前から何かおかしいと思ってたんだよね、お前の事。…だって、先生に指されても教科書の音読も出来ないし、ろくに字も書けないし、読めないしさ」


そういうのほんとにイラつくんだよ、と話すその声に、私は覚えがあった。


その声を、確かに聞いた事はある。


(でも、誰だったかな?)


よく、覚えていない。


んー?、と首を傾げる私をよそに、図書室の中では五十嵐と誰かの言い争いがまだ続いていた。


「何で俺がそんな事言われなきゃなんないの?…逆にこっちがイラつくんだけど」


「ほら、その態度!ほんとにムカつくわお前。いっつもいっつも、そうやってはぐらかしてさ。…テストだって、俺らと違う所で受けてんじゃねーかよ!お前、俺らと一緒に受けれない理由でもあんの?」


「はっ?」


その誰かの声に驚いて声を漏らしたのは、私だった。