『もしもし、優希?』


「花恋…?花恋なの?どうしたの?」


少し声がくぐもっているけれど、その可愛らしい声は花恋に間違いない。


途端に嬉しくなった私は、ベッドに腰掛けてスマートフォンを片耳に押し付けた。


『“どうしたの?”じゃないよー。優希、あの後大丈夫だった?』


「えっ、あの後って……。ああ、うん、まあ、何とか」


彼女に早々と確信をつかれた私は、文節ごとに一呼吸置いてしまうという致命的なミスを起こす程緊張しながら答えた。


『あれから、言われなかったでしょ?……その、男っぽいって』


やはり、花恋は私の事を“男っぽい”と言う事に未だに抵抗がある様だった。


「ああ、うん……。それは言われなかったんだけど、ちょっとね」


「えっ、何?どうしたの!?まさか、怜音が優希が傷付く他の内容を言ってきたとか!?……怜音、私があれ程言ったのに懲りないなんて……次は、何て言ってあげようかな……?」


私が口ごもってしまった事に過剰に反応した彼女は、電話口で叫んだ。


そこまではまだ良かったものの、間を空けた次の花恋の声は、とても恐ろしく聞こえて。


「花恋、花恋落ち着いて!…あの、そういう事じゃないの。その……」