その日の夜。


(ああ、俺……あー、私……何かもう、どうしよう)


1人で部屋にこもった私は、とにかくうろうろと狭い部屋の中を徘徊していた。


正直、あの後図書室で何が起こったかよく分からない。


全てが夢の様で、長かった様で短くて。


ただ、彼が分離していた2つの“私”の両方を受け入れてくれた事だけは、鮮明に覚えている。


それは、声として聞いたからではない。


体が、感覚が、ぬくもりとして、私の隅々まで伝わったのだ。



(えー……本当にどうすればいいんだろう?)


未だに頭が混乱しているけれど。


確か、あのハグの後、


『いつでも、俺を頼りにしていいからね』


と、言われた気がする。


それを聞いて、私は感動の余りまた泣いてしまった様な。


「後、どうしたんだっけ…」


つい数時間前の出来事を必死に思い出そうと、頭を掻きむしっていると。



ピロンッ……ピロンッ……


突然、私のスマートフォンが電話がかかってきた事を告げた。


「えっ……はい、もしもし?」


“勇也”と“優希”が入れ代わり立ち代わり登場していた先程とは打って変わり、私は“優希”として電話に出た。


電話をかけてきた人が誰か、確認もせずに。