その温かな声が、優しい声が、全てを包み込んでくれる様なたくましい声が。


先程まで緩まなかった私の涙腺を、刺激する。


「っ……五十嵐…」


「安藤、俺さ、先週安藤にハグされて……凄く、辛い気持ちが軽くなったんだ」


(視界が!ぼやける!…五十嵐、もう何も言わないで、本当に泣きそうだから…)


五十嵐のその言葉は、私にも覚えがある事で。


「それでね、調べてみたんだけど……」


五十嵐の声が、一瞬途切れる。


「好きな人に30秒ハグされるとね、その日のストレスが、3分の1解消されるんだって。…しかもね、辛い気持ちが、軽くなるんだって」


「っ……」


私の涙腺が、瞬く間に緩くなっていく。


「…ずっと抱えてきた、悩みも……ハグをする事で、一緒に共有出来るんだって」


「っ……」


もう、限界だった。


下唇を噛んで我慢していた涙が、洪水の様に外に溢れ出てくる。


「ごめ……ごめんっ…」


五十嵐の制服を濡らしてしまった私が、必死に謝ると。


「そんなの、全然大丈夫だよ」


と、彼の声が聞こえて。


その直後に、




「俺さ……安藤の事、好きみたいなんだ」




衝撃的な一言が、彼の口から飛び出した。