けれど、やはりこのままでは駄目だと考え直し、恐怖と闘いながらも図書委員としての務めを果たそうとした事。


そして、この件は無事終わりを告げたと思った時、五十嵐からの電話で私の秘密がばれた事。



「最後の方は、全部私の責任なんだ……五十嵐、変な事聞かせちゃって、本当にごめんね」


大雑把に説明をしたせいか、10分程しか時間は経っていなかった。


「いや、あの……内容は理解したし、その…凄い分かる、その気持ち」


今度は眼鏡をしまった彼は、真剣な目で私を見てきた。


今までとは違う声のトーンに、びくんと身体が跳ねる。


「っ……」


「あーっ、何か本が無かったからピアノでも弾いてこようかな。うん、そうしよ!…優希、お疲れ様」


五十嵐が口を開こうとしたその時、本棚からひょっこりと花恋が現れた。


どうやら、私の話が終わったから自分はいつもの様に音楽室に戻る様だ。


「花恋、ありがとう」


その背中に向かって、声を掛けると。


「私は何もしてないよ?…優希が、頑張っただけ」


彼女は長い髪の毛を揺らして振り返り、にっこりと笑って去って行った。


(花恋…)


私の心は、感謝でいっぱいだった。