私の本音は、あなたの為に。

「っ……それ、は…」


今までの迫力は何処へやら、彼の声は急にしぼんだ。


「っ……」


どうすればいいのか分からないといった様子で五十嵐は完全に身体の動きを止め、神妙な顔つきをして何かを考え始めた。


(もう、見てられない)


けれど、私はもう逃げ出さない。


これから私が行おうとしている行為について、頭では分かっているのに体はそれを完全に拒否していた。


手は震え、足に力が入らない。


(もう、いいや。どうなっても仕方ないよね)


元々、ママの前で演技を続けてきたせいで、心も体もボロボロだった。


特に自分の心に関しては、自分でも分からない程に汚れてしまったと思う。


今更1つや2つ、いや、5つ位傷がついても、それは私にとって何の影響も及ぼさないだろう。


あの日、あの時、あの場所で。


私が髪を切らなければ、私がママの目の前で自分をアピールしていれば。


こんな事には、ならなかったはずだから。




「あの……ちょっと、話したい事があって」


おずおずと切り出した私の声と、


「安藤、何度も何度も本当にごめん!…好奇心が、勝っちゃってさ…。俺、どうやって償えばいい?」


そう、ぱっと顔を上げて聞いてきた五十嵐の声は、同時だった。