私の本音は、あなたの為に。

私の事を私以上に分かってくれている花恋は、口元に乾いた笑みを浮かべた。


「前に、優希が音楽室に逃げて来た時。…優希、本当にしんどそうだったんだよ」


それを分かって、言ってるの?


花恋は、ぎろりと五十嵐を睨み付けた。


「えっ……」


驚きで声が出ない五十嵐。


そして、その会話をただ黙って聞いているだけの私。


(このままでいいの?)


(本当に、花恋に任せていいの?)


(これは、誰の問題?)


何人もの“私”が頭の中で討論を繰り広げた結果、出てきた答えは。


(…私の問題。私と、五十嵐の)


結局、これは私の問題だということだった。


(私……)


どうすれば良いのだろう。


五十嵐と花恋を止めるには、どうすれば良い?



そう考えている私を尻目に、2人はいつの間にか長期戦に入っていた。


「だから、少しは他人の気持ちも考えてって言ってるの!」


「俺だって俺なりに考えてるよ!…でも、分かんないんだから仕方ないじゃん!」


負けじと五十嵐は反論するけれど、今回ばかりは、私の思いを全て分かっている花恋の方が1枚上手だった。


「じゃあ、何でいつも優希の事を追及するの?誰にだって、人に知られたくない事の1つや2つ、あるでしょう?」