私の本音は、あなたの為に。

「花恋っ…私、私っ……」


なすがままに花恋の肩から顔を出した私は、そっと目を瞑った。


自分の頬を、温かい何かが伝うのを感じる。


「優希、大丈夫だから……」


「っ……」


花恋は五十嵐の視線を感じながらもなお、励ましの言葉を掛け続けてくれた。




「あの…ごめんね、今どうなってるの?何?これ?」


そして、数十秒後。


遂に、今まで黙りこくっていた五十嵐が口を挟んだ。


それもそのはず、私達にしか分からない会話を五十嵐が理解出来るわけが無いのだ。


「………優希、どうしたい?辛いなら帰る?」


「無視かよおいっ!」


見事なまでに彼の声を無視して私に話し掛けてきた花恋に、五十嵐がタイミングよく突っ込んだ。


「いやいや、元はと言えば君のせいなんだよ、怜音」


花恋は私の背中を軽くさすって離れ、次に五十嵐の方を向いた。


長い艶やかな髪の毛が、彼女が話す度に揺れる。


「優希に“男っぽい”って言わないでねって、この前言わなかった?」


「っ.........」


たった今思い出したのか、五十嵐の表情が一瞬で引きつる。


「あ…ごめ」


「もしかして、謝れば済むとでも思ってるの?」