私の本音は、あなたの為に。

「それで、今安藤に聞いてたんだけど…」


五十嵐の言葉は次第に弱くなり、語尾はほとんど聞こえなかった。


私にとってタブーな事を聞いたと、五十嵐は自覚した様だ。


「優希……」


不意に、私の肩を掴む彼女の手の力が緩んだ。


「…五十嵐に聞かれて、怖かった?」


それは、私にしか聞こえない程の小声で。


少しかがみ込み、俯いた私の目を見つめる花恋の目は、潤んでいた。


(怖かった、怖かったっ…!)


「……うんっ…」


(どうすればいいのか、分かんないよ…)


私が微かに頷いた、その瞬間。


「優希、よく頑張った…!」


花恋は、私を強く抱き締めたのだ。


「っ…うん…」



私は、どれ程花恋の温もりを感じたかったのだろう。


映画を観て辛くなった時、五十嵐との電話の最中のハプニングの直後。


私はいつだって、花恋の言葉を探していた。


花恋の温もりを、探し求めていた。


そうする事で、自分の気持ちが軽くなったと思っていた。


肩の荷が下りたと、そう感じていた。


見えない荷物は、花恋も一緒に背負ってくれていると。



けれど、実際はそんな事はなくて。


今更、私は気がついた。


軽くなったと錯覚しているだけで、実際は何も変わらない。



私が、行動を起こさない限り。


何も、変わらない。