私の本音は、あなたの為に。

「昨日、安藤が電話を切る直前に」


「っ……」


(もう嫌だよ…)


「安藤って、“勇也”って名前だっけ?俺、優希って名前だと思ってたけど」


(…やばいって、それ以上言ったら…)


全く話す事を止めない五十嵐。


今の私の中では、男の“私”が激しく身をもたげようとしていた。


それを制御するのに、必死な私。


(駄目駄目、男になっちゃ駄目)


「私は女、私は女……」


(此処は学校、家じゃない)


だから。


(男になっちゃ…)


「だって、安藤が男な訳ないし…って、え…安藤?」



駄目。



「っ……五十嵐」


(やっぱり、もう無理だよ。助けて…)


顔を上げた私の目からは、いつの間にか一筋の涙が零れ落ちていた。



「えっ!?安藤っ!?待って待って、俺そんなに何か…酷い事、言ったの!?」


その直後、五十嵐ははっと自分の口を押さえた。


「俺が“男っぽい”って言ったからだよね!?そうだよね!?ごめん、マジで忘れてた!」


「……それは、もういいよ……」


「へっ!?何、えっ!?」


五十嵐は、完全に私を見てあたふたしていた。



「あの…五十嵐…」


(もういいや、全部言おう)


意を決した私が、恐る恐る口を開いた瞬間。