私の本音は、あなたの為に。

いつも通りの通学路を歩き、学校へ到着した私。


そして教室のドアを開けた瞬間、今1番会いたくなかった人に出会ってしまった。


「うえっ!…あーびっくりした、安藤か。おはよっ」


ドアの目の前に、今まさに廊下に出ようとしていた五十嵐が立っていたのだ。


突っ込み所満載な、驚きの声を上げた彼。


思わぬ形で出くわしてしまい、やはり私は顔を上げる事すら出来なかった。


(無理無理無理無理)


「おはよう」


それでも、私は何とか顔を上げ、口角を上げて挨拶をする。


恐怖の余り、足元がふらつく。


この前も同じような事があったけれど、あの時は何とか克服した。


(この前も出来たんだから、今回も出来るはず)


今回も、前と同じ様に対応すればいいのだ。


(無理…でも、きっと大丈夫)


必死で上履きに力を入れ、よろけない様に立っていると。


「あ…ごめん、前通るね」


私が入口に立っていた事を邪魔に思ったらしい五十嵐が、私の肩を触って廊下に出ようとした。


「っ…!」


前と同じ、言葉で例えきれない程の恐怖が足元から這い上がってくる。


電話の事を聞かれるのではないかと思うと、全身の毛が逆立つ。


私は思わず彼の手を振り払い、そのまま自分の席に小走りで向かって行った。