私の本音は、あなたの為に。

朝。


「勇也、朝よー。起きなさい、遅刻しちゃうわよ」


ママによってカーテンが開いた音を聞きながら、私はいつもの様に目を覚ました。


「おはよう、母さん」


私の口もとには、笑み。


けれど、頭の中では全く別の事を考えていた。


(五十嵐に会いたくない、どうしよう!)


(切実に、学校を休みたい)


(五十嵐に何て言えばいいの!?)


昨日、日付がまわってからも私は1人で考えていた。


出来るだけ話す言葉を不自然にしない様に、頭の中で何度もシュミレーションをした。


聞かれた時に、スムーズに答えられる様に。


想定外の質問が来ても、笑顔で聞き流せる様に。



「…行ってきます」


「行ってらっしゃい」


そして、心の中では行きたくないと思っていても、ママには全くそんな素振りも見せずに家を出た私。


学校では、もう衣替え期間はとっくに終わり、私も半袖のワイシャツに夏用のスカートを履いて登校している。


学校に行く時はスカートを履いているというのに、ママには疑問を持たれないのだから不思議だ。


まあ、私服のスカートやワンピース類はほぼママが捨ててしまったのだけれど。