『だから、“勇也”って誰?後、何で安藤が返事したの?それと、何で安藤の1人称が“俺”……』
「ごめん五十嵐、夕飯食べないと!母さ…ママに言われちゃう!ごめんね、また明日ね!」
『え、ちょっ、おいっ…!?』
五十嵐の質問にも答えず、最後の切羽詰まったような声も聞かなかった事にして、私は何度も通話終了ボタンを連打した。
電話が切れ、ホーム画面へ戻った事を確かめた私の手は、ぶるぶると震え出していた。
その途端、スマートフォンが地面へと落下する。
(どうしようどうしよう!)
(やばいよね!?今、聞かれた!)
ママの声はともかく、私の声は完全に彼の耳に届いた。
私が、自分の事を“俺”と言った瞬間も、聞かれた。
(もう、最悪……)
元はと言えばあんなタイミングに私を呼んだママが悪いけれど、今は罪をなすり付ける余裕も無い。
「ああーっ、もうどうしよう!?」
それでも、夕飯は食べなければいけない。
私は、床に落ちたスマートフォンには目もくれずに、よろよろとした足取りで部屋を出た。
頭の中では、
(五十嵐に何て言おう…)
(お兄ちゃんの事は言った方がいいのかな?いや、駄目だよね)
(待って、先に花恋に言うべき?)
(ああどうしよう、分かんないよ…!)
何人もの“優希”が、討論を繰り広げながら。
「ごめん五十嵐、夕飯食べないと!母さ…ママに言われちゃう!ごめんね、また明日ね!」
『え、ちょっ、おいっ…!?』
五十嵐の質問にも答えず、最後の切羽詰まったような声も聞かなかった事にして、私は何度も通話終了ボタンを連打した。
電話が切れ、ホーム画面へ戻った事を確かめた私の手は、ぶるぶると震え出していた。
その途端、スマートフォンが地面へと落下する。
(どうしようどうしよう!)
(やばいよね!?今、聞かれた!)
ママの声はともかく、私の声は完全に彼の耳に届いた。
私が、自分の事を“俺”と言った瞬間も、聞かれた。
(もう、最悪……)
元はと言えばあんなタイミングに私を呼んだママが悪いけれど、今は罪をなすり付ける余裕も無い。
「ああーっ、もうどうしよう!?」
それでも、夕飯は食べなければいけない。
私は、床に落ちたスマートフォンには目もくれずに、よろよろとした足取りで部屋を出た。
頭の中では、
(五十嵐に何て言おう…)
(お兄ちゃんの事は言った方がいいのかな?いや、駄目だよね)
(待って、先に花恋に言うべき?)
(ああどうしよう、分かんないよ…!)
何人もの“優希”が、討論を繰り広げながら。



