私の本音は、あなたの為に。

そして、私達の視界からママの姿が完全に消えた瞬間。


「優希、ごめんね、ごめんっ…!」


花恋は一目散に私に飛び付き、おいおいと声を上げて泣き始めた。


「ごめんね……勇也君って、呼ん、じゃって……!呼びたく、なかった…ごめんっ…」


「大丈夫、大丈夫だから…。ね?」


(慣れてるから、大丈夫大丈夫)


私は、しっかりと自分の心に焼き付ける様に“大丈夫”という言葉を繰り返した。


花恋を安心させる様に。


自分はまだ大丈夫だと、暗示をかける様に。



「はあっ……」


此処だと邪魔になるから、あっち行こう、ね?、と、私は何とか花恋を道の端まで連れて行った。


「あー、本当にごめん!…でもね、あの映画は本当に観たくて…」


ごめん、と言いながらも、映画の話になった途端、花恋の瞳はきらきらと輝き始めた。


「何か…今のあらすじを聞く限り、私がその映画を観た時に優希と重ねちゃうと思うんだけど…。でも、本当に面白そうだと思って!優希はどうだった?」


一息で言い切った花恋は、大きく肩で息をする。


彼女の目から零れ落ちていた涙は、いつの間にか乾いていた。


「ああ…」


私は少し考え込み、率直な感想を口にする。