“優希、ごめん!私……これで良かったの?”


そう、目だけで語りかけてくる花恋。


私は、ママに気付かれない様に口角を上げて頷いた。



「花恋ちゃん、何をしていたの?」


急なママの声で、私と花恋の2人きりの時間は引き裂かれる。


「あっ、私は買い物に行ってました。…そちらは、何をしていたんですか?」


私の前で、私の事を“勇也君”と呼びたくないのだろう。


花恋は、違う言い回しで質問を返した。


「私達は、映画を観に行っていたのよ。“記憶の欠片を握りしめ”って映画、知っているかしら?」


途端に、花恋の目が輝いた。


「ええっ!“流れ星”を観に行ったんですか!?…私、あの映画観たいんです!どうでしたか?感動しましたか!?」


「“流れ星”…?」


私は、きょとんとしてオウム返しに尋ねた。


「あっ、流れ星っていうのは“記憶の欠片を握りしめ”の省略した名前です」


花恋は、私達に向かって説明する。


「映画の名前だと省略しずらいから…。皆、映画の広告に描かれた星空に、流れ星が描いてあったのを見て、“流れ星”って呼んでて」


背景に流れ星が描いてあるなんて、あまり見ないから…、と、花恋はにこにこと笑った。