「うん」
自分のリュックを軽々と背負った彼は、壁に指を滑らせながら歩いて行った。
「ちょっと、鍵は私が持ってるんだから待って!」
「安藤が遅いんだよ」
「なっ!?」
五十嵐は振り返り、リズム良くコツコツと壁を叩きながらにやりと笑ってそう告げた。
“いつもの五十嵐が、戻った”
そう思って嬉しくなった私は、にっこりと笑いながら彼の後を追い掛けて行った。
そして、日直の先生に図書室の鍵を返した私達は、下駄箱で靴に履き替えていた。
校庭からは、陸上部の応援の声と、それに応える様に、何人もの人の後ろから物凄い勢いで砂埃が上がっている。
「走ってるのかな?」
「うん、そうだと思う」
五十嵐はそんな懸命に走っている陸上部員を感心したように見つめ、私を待たずに歩き出した。
「あっ、ちょっ!」
それを見た私は靴紐を結ぶスピードを早め、急いで五十嵐の隣に並んだ。
「五十嵐、いつも私の事を待たないで…。この罪は重いからね」
冗談交じりに言った私の言葉を、彼は
「うん、知ってる」
と、笑って終わらせる。
「もうっ…」
私は、そんな五十嵐に1つ息をつく。
(全く、少しは待っててくれたって…)
私が、心の中で愚痴愚痴と文句を言い始めた時。
自分のリュックを軽々と背負った彼は、壁に指を滑らせながら歩いて行った。
「ちょっと、鍵は私が持ってるんだから待って!」
「安藤が遅いんだよ」
「なっ!?」
五十嵐は振り返り、リズム良くコツコツと壁を叩きながらにやりと笑ってそう告げた。
“いつもの五十嵐が、戻った”
そう思って嬉しくなった私は、にっこりと笑いながら彼の後を追い掛けて行った。
そして、日直の先生に図書室の鍵を返した私達は、下駄箱で靴に履き替えていた。
校庭からは、陸上部の応援の声と、それに応える様に、何人もの人の後ろから物凄い勢いで砂埃が上がっている。
「走ってるのかな?」
「うん、そうだと思う」
五十嵐はそんな懸命に走っている陸上部員を感心したように見つめ、私を待たずに歩き出した。
「あっ、ちょっ!」
それを見た私は靴紐を結ぶスピードを早め、急いで五十嵐の隣に並んだ。
「五十嵐、いつも私の事を待たないで…。この罪は重いからね」
冗談交じりに言った私の言葉を、彼は
「うん、知ってる」
と、笑って終わらせる。
「もうっ…」
私は、そんな五十嵐に1つ息をつく。
(全く、少しは待っててくれたって…)
私が、心の中で愚痴愚痴と文句を言い始めた時。



