私の本音は、あなたの為に。

今更他のやり方なんて、考えられない。



「ねえ、五十嵐?」


私は、未だに肩を震わせている五十嵐に声を掛けた。


「…何?」


五十嵐は、しゃくり上げながらそう聞き返してきて。


まだ何かに怖がっているのか、五十嵐は私に抱き着いたままで顔を上げようとしなかった。


「…五十嵐は、もっと助けを求めて良いと思うよ」


私は、小さな声でそう呟いた。


「……え?」


「いや、もしも今日のこの出来事で、五十嵐が元気になったのなら大丈夫だけど…。でもね、中には、泣きたくても泣けなくて、助けを求めたくても求められない人も居るんだよ」


(私みたいに)


驚いたのか、五十嵐の身体の震えが一瞬止まったように感じた。


「自分の前の行為をどんなにどんなに悔やんでも、もう後戻りは出来ない。…それに、最終的には自分の存在意義を忘れるかもしれない」


私は、五十嵐の大きい様に見えて小さな背中を擦りながら続ける。


「だから…五十嵐は、そうならないで欲しいんだ。…辛い事があっても、家族に言えば元気が出るかもしれないし!」


しんみりした空気を変えようと、最後の語尾はわざと明るくさせた。


けれど、それによって私の心の中は何個もの重りをぶら下げている様に重くなって。