私の本音は、あなたの為に。

そうでないと、五十嵐がどうなってしまうのか分からなかったから。


あんなに明るい五十嵐がこんな風になる事があるなんて、想像した事もなかった。


「助けて、助けて……俺、もう周りが見えないよ……」


私にとって意味深な事を言い続ける五十嵐の声は、とても弱々しくて。


「どうしよう、怖い……今までに無いくらい、怖いんだ」


私の手を握り返す彼の力は、尋常ではない程強くて。


それ程、彼は何かを強く拒絶している事が分かる。


しかも、五十嵐の身体はぶるぶると震えていた。


「っ……どう、しよう…俺……ごめんねっ…本当にごめん…」


「五十嵐!?」


どうやら、彼は泣いている様で。


(えっ、待って待ってどうしよう!?)


私が泣かせたとか、そういった事にはならないでもらいたい。


酷いパニック状態に陥った五十嵐は、何かに怯えて泣いているのだ。


そう。


私のせいではない。



しばらく考えた末、私は優しく彼に話し掛けた。


「五十嵐が落ち着くまで、ずっとこの体勢でいてあげるから」


「っ……」


理由は言えなくても、五十嵐は明らかに何かに怖がっている。


私が離れれば、五十嵐は先程の様に我を忘れて私の姿を探し求めるかもしれない。