私の本音は、あなたの為に。

「……安藤?そこに居るの?」


五十嵐は、固く目を瞑ったままそう問うてきた。


「そうだよ、私は此処に居る。…五十嵐、何があったの?さっきからどうしたの?」


堪らず、私はそう尋ねてしまう。


「…安藤、俺……」


五十嵐は、吐息と共にゆっくりとある言葉を吐き出した。


「俺、怖い………」


(え……?)


突然の告白に、私は驚き過ぎて言葉も出ない。


何せ、“あの”五十嵐だ。


教室では仲の良い男子とつるみ、放課後は楽しそうにゲームをして。


私とは違って、いかにも充実した生活を送っていそうなのに。


何が、“怖い”というのだろうか。


先程、幽霊という可能性を真っ向から否定していたから、その確率は非常に低い。


「じゃあ、何に怖いの?」


私は、目の前の五十嵐に向かってそう聞いてみる。


「……とにかく、怖いっ…!…助けて、安藤……」


五十嵐は私の問いに答えず、いきなり私の胸の近くに顔を押し付けてきた。


「えっ!?」


「安藤、俺怖いよ……。凄く、めっちゃ怖い」


静かに、けれどはっきりと。


五十嵐は、私の胸に顔を押し付けたそのままの姿勢で言葉を繋ぐ。


「五十嵐……」


動揺しながらも、私はそのままの姿勢を保つ。