私の本音は、あなたの為に。

「やだ、幽霊……?」


私の心の内のパニックは、言葉となって五十嵐の耳に届いてしまったようで。


「…違うよ安藤、…っ…!」


首を振りかけた五十嵐が、またもや苦しそうな表情を浮かべる。


「安、ど……う、っ……!」


「五十嵐、どうしたの!?大丈夫!?何処か痛いの!?」


いきなり俯いてしまった五十嵐の背中を、私はどうすればいいのか分からないまま擦った。


「具合悪いの?吐きそう?今日、何食べたの?」


こういう時の対処法が分からない私は、とにかく彼を質問攻めにする。


「…違う。……大丈夫、俺は大丈夫」


五十嵐は、またゆっくりとこちらに向かって顔を上げる。


けれど、五十嵐の呼吸が乱れている事くらい一目瞭然で。


「安藤………」


ただただ、彼は私の名前を呼び続ける。


「何?」


私はしゃがんだ姿勢から座り込み、五十嵐の目線に合わせた。


五十嵐の澄んだ目は、辛そうに歪んで私の目を捉えている。


彼の瞳に、私の心配そうな顔が映っている。


まるで、私の目の中だけが唯一の逃げ場だと言う様に、彼は私の目の奥を見つめたまま目を逸らさなかった。



「五十嵐…」


それから、何秒が経っただろうか。


「私、本片付けてくるね」