私の本音は、あなたの為に。

「あっ………うん」


五十嵐の返事に、奇妙な間が空いた気がした。


私が数冊の本を抱えてそちらを見ると、五十嵐は私の持つ本を見ながら顔を顰めていた。


その瞳は、まるで何かを拒んでいる様で。


“見たくない”


“嫌だ”


何故か、彼の目はそんな事を訴えている様な気がした。


「五十嵐、大丈夫?」


不安になった私は、本を片付けて五十嵐の目を見て尋ねた。


五十嵐の、本心が読み取れるかもしれない。


けれど。


「ん?大丈夫って何が?俺?俺ならいつも元気ハツラツじゃん!」


と、笑って誤魔化された。


先程までの辛そうな瞳の陰りは、いつの間にか無くなっていた。


「そ、そうだよね!五十嵐だもんね!」


と、私は何とか五十嵐のテンションに合わせて答える。


そんな私の対応が面白かったのか、五十嵐は勢い良く吹き出した。


そのせいで、五十嵐の手からスマートフォンが離れる。


「安藤っ…安藤って、最高!…クックッ……めっちゃ面白い!」


「そう?…それは良かった」


五十嵐の笑い方は、何となく不自然な感じがしたけれど。


(神経質なのかな、私)


きっと自分にストレスが溜まっているものだと思い直した私は、先程取った本を持ってカウンター席へ戻ろうとした。