私の本音は、あなたの為に。

そのまま、十数分が経過した。


私は学校の課題を終わらせたり、黙々とスマートフォンをいじってみたりしていたけれど。


(本を読みたい……)


目の前に大量の本がある中で、私には“本を読まない”という選択肢を選ぶのは至難の業で。


私は、まだ音楽を聴いている五十嵐の後ろを、つま先立ちでそろりそろりと通って行った。



五十嵐は、私が後ろを通っても全く気づいていない様で。


(よしよし)


本棚に辿り着いた私は、1番手前にあった面白そうな題名の本を引っ張った。


その途端。


バラバラバラ……


私が取ろうとしていた本の上に、別の本が何冊も横になって置かれていたらしく。


それら全ての本を、私が下の本を抜き取った事によって床に落としてしまったのだ。


「わっ!!」


驚いて、悲鳴に近い声をあげてしまう私。


その声が大きかったのか、


「わっ!!何何何!?」


と、五十嵐までもが慌てふためいてこちらを振り返った。


イヤホンを外した五十嵐は、


「どうしたのさ、もう心臓が止まるかと……」


と、ぶつくさ言いながら私の方を見てくる。


「ごめんね、本を落としちゃって…」


私はしゃがみ込み、開かれた本を綺麗に閉じながらそう答える。