私の本音は、あなたの為に。

そして、放課後になった。


(五十嵐、帰っちゃったのかな)


五十嵐の荷物は、教室に置きっぱなしだった。


けれど、私の高校は置き勉をしても問題は無いから、大量の教科書を置いて帰る人も居る。


(今日の係、1人か…)


(花恋に来て貰おうかなー)


そんな事を考えながら、図書室に着いた私はドアを開けた。



「安藤?」


ドアを閉めて顔を上げた私の目の前の椅子に、五十嵐が座っていた。


彼は、私の姿を求めて振り返る。


射し込んで来る光が眩しいのか、五十嵐は目を細めていた。


「あれ…?」


てっきりもう帰ったと思い込んでいた私の想像を、遥かに超える彼の行動。


「何やってるの…?」


私は、それしか言えなかった。


「何って?」


五十嵐は、口の端を上げた。


「係でしょ?俺、安藤が来るの待ってたんだ」


「…授業は?何で来なかったの?」


私は、自分で聞いたはずの質問に対する回答をスルーし、机に自分のリュックを置きながらそう尋ねた。


「え?いつの時間の事?」


五十嵐は、スマートフォンに接続したイヤホンを耳に付けながらはぐらかす。


「6時間目!五十嵐、聞いてるの?」


私は机越しに身を乗り出し、五十嵐のイヤホンを耳から抜き取った。